岡山、広島で洪水被害に遭われた先生にお見舞い申し上げます。
現在岡山では、被害に遭われた火災保険の契約者から損害保険会社に相当数のクレームが入っているようです。
旧態依然の火災保険に加入していても、洪水被害に対しては十分な補償を受けられなかったのです。
建物に対する補償については下記のようにまとめられています。
・建物に30%以上の損害が生じたときに、その損害額の70%を補償。
・15%以上30%未満の損害が生じたときは、地盤面より45㎝以上の浸水であれば、保険金額の10%の金額を補償。45㎝以下であれば被害があっても補償されません。
・15%未満の損害が生じた場合は、地盤面より45㎝以上の浸水であれば、保険金額の5%となっていて、どんな状況でも洪水被害に対しては実際の損害額が補償されるわけではないのです。
特筆すべきは、医療機器などの洪水被害に対する補償です。
これまで最も普及していた「店舗総合保険」に漫然と加入していても、十分な補償など受けられないのです。
ビル診(賃貸)で開業した場合、クリニックの内装や空調、CT、パノラマ、ユニットなどの医療機器は「設備・什器備品」として保険を掛けることになります。
スケルトンの状態から、5,000万円もの設備投資をして開業したクリニックが、「設備・什器備品」に、5,000万円の火災保険(店舗総合保険)をかけていて、洪水で水没し壊滅的な被害を受けたとしても、設備・什器備品に対しては、1構内100万円限度の補償しか受けられないのです。
5,000万円の設備に5,000万円の火災保険が掛けられていても、お見舞金程度の補償しか受けられないのです。
パンフレットには、
1火災 2破裂・爆発 3落雷 4風災、雹災、雪災 5外部からの物体の飛来・落下等 6給排水管の事故による水濡れ 7騒擾による破壊行為 8盗難 9水災 などの損害に対して補償が受けられると記載があるものの、水災による設備・什器備品の損害に対しては1構内100万円限度との注釈があるのです。
これでは、万一被害に遭われた場合、クリニックを再建するのは困難を極めてしまうのです。
日本の気候は亜熱帯化しているといわれています。
ここ数年で起きた集中豪雨は、「観測史上」「50年に一度」「ひと月分の雨量が3時間で」などで表現される異常とも思える降水量で、心配な地域のみならず、予想もしなかった場所でさえも洪水被害に見舞われています。
日本近海では海水の温度が上昇し、スーパー台風が発生し勢力が衰えぬまま日本に接近するという懸念も高まっています。
さらに都市部では、台風の接近も前線もない状況でも、局地的な集中豪雨が発生しています。
このような、突然襲う集中豪雨は、ヒートアイランド現象によって都市部を中心に今後も増えると考えられています。
ご自分のクリニックが、洪水の危険性がある地域はもちろん、地形的にゆるやかな高台であっても、半地下構造になっているのであれば、早急にクリニックの保険の見直しをお勧めいたします。
また、注意が必要なのは洪水被害の心配のない高台であっても、土砂災害は水災として取り扱われることです。
事が起きてしまってから、「契約時に聞いていない」「水災補償を外した覚えがない」等々のクレームを言っても、補償を受けることは出来ないのです。
リスクマネジメントを疎かにしていると、地域医療を支えるクリニックの存続が危ぶまれてしまう事にもなりかねません。
こんなはずでは無かったと嘆かないために、クリニックのリスクマネジメントを再確認してみてはいかがでしょうか?
歯科医院経営のリスクマネジメントに関しまして、メールでのご相談を受け賜ります。
対面でのご相談をご希望の先生は、お近くのリスクマネジメントが提案できるコンサルタントをご紹介させていただきます。
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