さまざまな準備や届出・手続きでやっとの思いで漕ぎ着けた医院開業。各分野の専門家やコンサルタントなどから、十分なアドバイスを受けていても、それでも最も肝心な医院経営のリスクマネジメントがおざなりになっている院長も多いようです。
今回から院長とクリニックを護る歯科医院経営のリスクマネジメントについて考えてみたいと思います。
院長となってリスクマネジメントの初めの一歩としては、医療訴訟への備えと言えます。これが歯科医院にとって、もっとも身近で準備しておくべき保険といえます。さすがに歯科医師賠償責任保険に加入しないで開業される院長はいないのではないかと思います。
しかし、もっとも身近なこの保険を十分に理解されている先生はほとんどいないようなのです。
歯科医師賠償責任保険は、歯科大や地域の歯科医師会の関連代理店、医師・歯科医師の協同組合、保険医協会などから加入することが多いようです。また、内容をわからずに各団体からの案内に応じて重複して契約している先生も見かけます。
歯科医師賠償責任保険にさえ入っていれば、ことが起きてしまったときには、万事保険会社がうまく収めてくれると思われている先生がほとんどではないでしょうか。しかし、そうではないようなのです。
自動車保険や個人賠償責任保険などの一部のケースは例外で、保険会社の行う示談代行は非弁行為(弁護士法違反)にあたるとされ、歯科医師賠償責任保険では、示談代行サービスは行われないのです。
示談代行が行われないとなると、保険会社は患者と直接連絡を取りません。
院長が自ら患者と対峙して対応をしなければならないのです。
万一医療訴訟となれば、治療費・慰謝料・休業損害などが請求されますが、保険会社が保険金を支払うためには、それらの損害を認定しなければなりません。
例えば休業損害を認定するためには、診断書や患者の確定申告書や源泉徴収票を入手する必要があります。
これを院長自らが、あなたの収入はいくらですか?源泉徴収を出してくださいといったらどうでしょう?
院長に対して好意的ではない感情を持ってしまった患者さんに・・・・
考えただけでも相当なストレスがかかり、診療どころではなくなってしまいそうです。
また、自由診療は歯科クリニック経営のポイントになりますが、トラブルが多いのも自由診療に関するところのようです。
診療契約の解釈は、手術が成功して病気が治るなどの結果を約束された「請負契約」ではなく、適切な医療水準をもって最善の医療行為の実施を行う義務を負う「準委任契約」と解釈されています。
しかし、高額な治療費を払っても結果がともなわなければ、患者は不満に思い、納得できずに治療費の返還要求や訴訟に発展することも多いようです。
歯科医師賠償責任保険は医療事故とは判定されないクレームは、そもそも補償の対象外ですし、ホワイトニングやヒアルロン酸の注入・ボトックスなど、治療ではなく審美やアンチエイジングを目的の行為に対しても、補償の対象とならないようです。
自費診療や美容・今後はアンチエイジング分野も積極的に取り入れていく歯科クリニックでは、「身体障害の無い、説明義務違反」や「美容分野」に対しても弁護士のサポートや補償が受けられる共済会への加入も検討されてはいかがでしょうか。
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